『兎の眼』(著:灰谷健次郎)
大学生の時以来に読み直した『兎の眼』(著:灰谷健次郎)。
『兎の眼』との出会いは、僕が小学2年生の時。
3か月間の入院生活の時、毎日、お見舞いに来てくれていた母が、僕が寝ている時にベッドの横で読んでいたのが『兎の眼』。母が「克彦も大きくなったら読んだ方がいいよ」と薦めてくれて、ずっと気になりながらも初めて読んだのが大学生の時。
横浜から八王子までの横浜線の車中で、こぼれる涙を抑えきれずに読み、すっかり灰谷健次郎さんのファンになり、その後も『太陽の子』『海に涙はいらない』『砂場の少年』『海の図』を続けて読み、多くの作品で、やっぱり涙を流していた当時。
あれから20年近くの時を経てKindle版を読み返しました。ハウツー本ばかり読んでいたので、小説、しかも、灰谷健次郎さんの世界観が心地よかったです。
相手と向き合うことの大切さを改めて学びました。
相手と向き合うことで、相手が心を開いてくれる。
強烈に印象に残った文章。
「よわいもの、力のないものを疎外したら、疎外したものが人間としてダメになる。」
印象的な内容
- ハエを飼うとるのんは鉄三が悪いわけやない。山へつれていってやれば鉄三は虫を飼うと思います。川へつれていってやれば魚を飼うと思います。
- この子も人間の子なんやから、人間の友だちがほしいとわしゃいつもねがっとるんです。鉄三はちゃんとした人間の子ですわい。
- 人間は抵抗、つまり、レジスタンスが大切ですよ、みなさん。人間が美しくあるために抵抗の精神をわすれてはなりません。
- 苦しんでも自分で考えて、自分でつくりだすようにします。
- そういう世の中だからこそ、いっそう学校で思いやりというもんを教えてほしいと思いまんな。
- よわいもの、力のないものを疎外したら、疎外したものが人間としてダメになる。
- いまの人はみんな人間の命を食べて生きている。戦争で死んだ人の命を食べて生きている。
- 出発、なんていいことばだろう。
目次
プロローグ
ネズミとヨット
教員ヤクザ足立先生
鉄三のひみつ
悪い日
鳩と海
ハエの踊り
こじきごっこ
わるいやつ
カラスの貯金
バクじいさん
くらげっ子
くもりのち晴れ
みなこ登板
泣くな小谷先生
さよならだけが人生だ
ハエ博士の研究
赤いヒヨコ
おおきなゲリラたち
不幸な決定
せっしゃのオッサン
ぼくは心がずんとした
波紋
鉄三はわるくない
つらい時間
裏切り
流れ星
エピローグ